水だけを用いたキチンの分離精製や材料化の技術を紹介する。温度や圧力を制御した水を反応場とすることで、水の物性をコントロールし、従来の化学産業で多用されてきた酸・塩基や有機溶媒を使わないキチンの利用を提案する。 ...and more
キチナーゼはN-アセチルグルコサミンがβ-1,4-結合したポリマーであるキチンを加水分解する酵素である。キチン質が糸状性真菌の主な細胞壁成分の1つであること、特に植物においては病原菌の感染により特異的に発現が誘導されること等から、キチナーゼは真菌細胞壁中のキチンを分解することによって抗真菌活性を発揮する生体防御タンパク質の1つと考えられている。また、細菌類においても抗真菌活性を示すキチナーゼが報告されている。しかしながら、全てのキチナーゼが抗真菌活性を示す訳では無く、むしろ強い抗真菌活性を有するキチナーゼの報告は少なく、その構造と抗真菌活性の関係についてはあまりわかっていなかった。本稿では、キチン分解酵素の構造と抗真菌活性との関係について、これまでにわかって来ていることを、我々の研究グループの成果を中心にレビューする。キチナーゼの構造と抗真菌活性の相関の解明は、植物の生体防御システムの理解、病原抵抗性作物の育種、抗カビ剤および抗真菌薬の開発に寄与することが期待される ...and more
キトオリゴ糖は、キチンまたはキトサンが分解することで生成され、抗菌、抗がん、抗炎症などの生理活性を有する。酵素によるキトオリゴ糖の生成は、安全性とその簡便さから多くの注目を集めている。我々は、カニクイザルが胃において、酸性キチナーゼ (acidic chitinase, CHIA) mRNA を高いレベルで発現していることを明らかにした。カニクイザル CHIA は、強酸性を含む幅広い pH 条件下において、熱耐性を有する頑強なキチナーゼ活性を有していた。さらに、カニクイザル CHIA は、強酸性および高温条件下において、不活性化することなく、キチンとキトサンを効率よく分解し、キトオリゴ糖を生成した。我々は、農学および医学領域におけるカニクイザル CHIA の応用を提案したい。 ...and more
キトオリゴ糖は、キチンまたはキトサンが分解することで生成され、抗菌、抗がん、抗炎症などの生理活性を有する。酵素によるキトオリゴ糖の生成は、安全性とその簡便さから多くの注目を集めている。我々は、カニクイザルが胃において、酸性キチナーゼ (acidic chitinase, CHIA) mRNA を高いレベルで発現していることを明らかにした。カニクイザル CHIA は、強酸性を含む幅広い pH 条件下において、熱耐性を有する頑強なキチナーゼ活性を有していた。さらに、カニクイザル CHIA は、強酸性および高温条件下において、不活性化することなく、キチンとキトサンを効率よく分解し、キトオリゴ糖を生成した。我々は、農学および医学領域におけるカニクイザル CHIA の応用を提案したい。 ...and more
キチンは、セルロースと並ぶ地球上に最も豊富に存在する有機資源である。しかし、キチンは分子内・分子間での多数の水素結合形成による高い結晶性と強固な伸びきり分子鎖集合構造を形成するため、実用的材料としてはほとんど有効利用されていない。特に、N-アセチル-ᴅ-グルコサミン繰り返しユニット中のアセトアミド基が非常に強固な分子間水素結合を形成することで、キチンはセルロースと比較して、より溶解性、加工性に乏しい。近年、イオン液体が、キチンからのソフトマテリアル創製に用いられて注目されている。本稿では、イオン液体による溶解あるいはゲル化を経由する、柔軟、熱可塑性などのソフトマテリアル化の試みについて概説する。 ...and more
カニ殻の主成分である多糖類:キチンは豊富なバイオマスでありながら、溶解性に乏しいため、ほとんど利用されていなかった。最近、キチンを機械的に粉砕することにより「ナノキチン」に変換する技術が発明された。ナノキチンは幅が10 nmほどの、繊維状の物質であり、水中に均一に分散できるため、加工がしやすい。また、機能の探索も可能であり、これまでに多様な機能を明らかにしている。ナノキチンは、皮膚に対する効果や服用に伴う効果、植物に散布した時の効果を備える。今後も、未知の潜在的な機能を明らかにすることで、この未利用資源由来の新素材の活用が進むと期待している。 ...and more
オリゴ糖を人工的に合成する手法は酵素法と化学法とに大別され、それぞれに様々な合成手法が存在している。酵素法は糖転移酵素あるいは糖加水分解酵素を用いてオリゴ糖を合成する手法であり、オリゴ糖の水酸基に保護基を導入せずに合成出来る点にメリットがある。一方、化学法は有機合成化学的手法に基づいてオリゴ糖を合成するため、水酸基の保護・脱保護の工程が必須となるが、天然・非天然のオリゴ糖を自在に合成出来る点にメリットがある。オリゴ糖の化学法による合成のために様々なビルディングブロックがこれまでに開発され、同じビルディングブロックについても何種類もの活性化法が存在している。本項では取り扱い容易なビルディングブロックとして幅広く利用されているチオグリコシドを、電気化学的に活性化してグリコシド結合を形成する電解グリコシル化反応について紹介する。 ...and more
エビやカニなどの外骨格を支える構造多糖であるキチン・キトサンはセルロースに次ぐ産生量の海洋バイオマスであるが、未だ利用の進んでいない天然資源である。これまでに様々なアプローチでキチン・キトサンを高付加価値材料とする取り組みが検討されてきた。材料を高機能化するためには化学的修飾と形状・構造複雑化とが方針として考えられる。本稿では、キトサンに微粒子形状を与え、さらに無機物である炭酸カルシウムと複合化することで新たな機能性材料を調製する方法について紹介する。 ...and more
カニ殻などに含まれるキチン・キトサンには様々な生体機能が知られている。特に、50年ほど前よりキチン・キトサンの有する創傷治癒促進効果について多くの研究がなされている。現在では、キチンを原料とする創傷被覆材も医療現場にて使用されている。今回は、キチン・キトサンと創傷治癒促進効果について解説する。 ...and more
天然多糖類のキチンやキトサンはカニやエビ殻などから抽出されるムコ多糖で、生体との親和性が高く多方面で研究されている。微生物との相互作用もあり、農業分野や食品分野での展開も広く全世界に広がっている。溶液状だけでなく繊維、多孔質ビーズ、スポンジなど形態を変えてそれぞれの用途展開が広がってきている。最新の技術でキチンやキトサンのナノファイバーに関する研究も進み、サイズ効果、比表面積効果がもたらす可能性の広がりに期待が膨らむ。 ...and more