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はじめに

鈴木 康夫

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鈴木 康夫
鈴木康夫教授は、静岡薬科大学大学院薬学研究科を修了し、1974年に薬学博士号を取得した。 1996年から2002年まで静岡県立大学の薬学部長および大学院薬学部長を務めた。また、日本糖質学会の副会長も務め、2004年には日本薬学会賞と中日文化賞を受賞した。現在は、中部大学生命健康科生命医科学科の教授である。専門分野は、生化学、ウイルス学と糖鎖生物学で、ウイルス感染における糖鎖機能の解明と創薬への応用に特に重点的に取り組んでいる。グリフィス大学(オーストラリア)および浙江省医学科学院(中国)の客員教授でもあり、2006年8月にはThe 5th International Sialoglycosceince 2006のオガナイザーを務めた。

感染症における糖鎖の役割

21世紀における主要な病気は、生活習慣病、ガンなどに加えて新興・再興感染症が挙げられます。感染症の原因である病原微生物は、表面に糖鎖を持っています。また、エンベロープを持つウイルスの多くや、それを持たないウイルスのいくつかも糖鎖を持っています。そして、彼らの持つ糖鎖は宿主の免疫監視機構から逃れたり、積極的に宿主への感染に役立っています。一方、微生物が宿主側の糖鎖を利用する機構も存在しています。この場合は、微生物が有する糖鎖を認識するレクチン様分子、これらはしばしば、へマグルチニン、アドヘシンあるいは毒素とも呼ばれますが、これらを介して宿主細胞への感染を果たしているのです。

ウィルスや微生物とそれらの宿主動物の進化には、糖鎖を介した感染という相互認識が深く関わっていることは否定できません。すなわち、感染症の克服には糖鎖微生物学を基盤とした研究は欠かせないと言えると考えます。
このサイトは、ウイルス、細菌、原虫、カビなどの微生物と糖鎖に関するすべての科学分野を包括する予定です。多くの研究成果のレビュー、オピニオンが寄せられることを期待しております。

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Yasuo Suzuki

現代における新興再興感染症

20世紀中には撲滅されると考えられていたウイルスや細菌による感染症は、20世紀末には、予期に反して新興・再興感染症として姿を現すようになりました。その背景として考えられていることは、20世紀に始まった産業活動の爆発的なひろがりです。特に熱帯地域での大規模森林伐採は、結果としてヒトと病原微生物の接触の機会を著しく増大させました。また、地球温暖化は温帯地域の熱帯化を引き起こし、蚊やハエなど病原微生物の媒介昆虫の増殖を引き起こしました。そして、大量空輸による交通手段の迅速化が、病原体の移動を世界規模で容易にしたことな どが新興・再興感染症の出現の主たる要因としてあげられています。2003年に出現したSARSはその典型例です。

このような状況のなかで、感染症は正にこれから人類が直面する大きな課題であると考えられています。私たちは、この現代の難問に立ち向かうときに、糖鎖研究の方面から大きな貢献がなされることを願っています。


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