Vincent C. Hascall
1969年にRockefeller大学からPh.D.を取得した。クラスメートのDr.Stanley Sajderaと共同の学位論文における研究は、現在ではaggrecan と呼ばれている軟骨 プロテオグリカンの会合する性質に関するもので、プロテオグリカンを組織と細胞から抽出・精製する際に広く使われている解離的抽出法を新しく導入した。卒業後Michigan大学の生化学及び口腔生物学教室で職員に任命された。1975年プロテオグリカンセクションでの研究を主催するため、Bethesda にある国立歯学研究所(National Institute of Dental Research)へ移動。1994年現職である Cleveland Clinic FoundationのLerner研究所 Biomedical Engineering部門のスタッフに任命された。結合組織生物学と糖質生物学への多大な貢献により、スウェーデン・ルント大学から“Doctor of Medicine,honaris causa”を授けられ、また複合糖質学会からは“Karl Meyer Award for Glycoconjugate”を受賞し、更に米国生化学会誌(J. Biol. Chem.)のAssociate Editorshipを委任されている。
柳下 正樹
1973年に慶応義塾大学医学部を卒業後、同年内科研修医として虎の門病院勤務。1975年アメリカ合衆国、国立小児発育研究所(NICHD)で客員研究員となり研究歴が始まる。ここでDr. Hascallの知遇を得、薫陶を受けプロテオグリカン研究を始める。1979年から1980年の間内分泌科の臨床研修を完了するため虎の門病院勤務後、再びNIHに戻りDr. Hascallの研究室に参加、プロテオグリカンとくにヘパラン硫酸プロテオグリカンの細胞代謝に関する研究を行った。1996年より現職、東京医科歯科大学歯学部生化学講座教授。
Bryan P. Toole
Bryan P.Toole はオーストラリアのメルボルンで教育を受け、メルボルン大学で理学士を、モナッシュ大学で生化学の Ph.Dを授与された。Dennis Lowther教授の研究室における彼の Ph.Dの研究では、現在デコリンと命名されているデルマタン硫酸プロテオグリカンを精製単離し、また生理的条件下でデコリンがコラーゲンと相互作用することを最初に証明した。1968年、博士はボストンへ移り、Massachusetts General HospitalとHarvard Medical SchoolのJerome Gross博士の研究室でポストドクとしての研究に取り組んだ。ここでToole博士は、再生と胚の発生過程でヒアルロン酸が、運動性をもち増殖する細胞を取り囲み相互作用することを示した。1972年、博士はハーバード大学職員となり、自分の研究室を創設して胚発育とガンにおけるヒアルロン酸と細胞の相互作用、およびヒアルロン酸レセプターの生化学的性質の究明に取り組んだ。1980年、博士はボストンのTufts大学健康科学分校に解剖学と細胞生物学の教授として加わり、1985〜1992年には同学部の主任であった。現在博士は the George Bates の組織学の教授であり、Tufts大学健康科学分校における細胞、分子および発育生物学の Ph.D.課程の所長を勤めている。博士の研究室は形態形成とガンにおけるヒアルロン酸と細胞の相互作用、さらにガン転移時の、マトリックスメタロプロテイナーゼの制御における腫瘍と基質細胞相互作用の役割に引き続き研究の焦点をあてている。
生化学工業株式会社がグライコフォーラムを開設して10周年を迎えました。その中の“The Science of Hyaluronan Today(今日のヒアルロン酸科学)”は、開設時からの特集であり、この興味深い高分子物質の、多面的で拡大し続ける医学・生物学的、科学的な機能について、新たな見解を発信し続けてきました。そして過去一年間の100万人近い訪問者数が示すように、今や最先端のヒアルロン酸科学における貴重な情報源となっています。
私たちは、生化学工業から、掲載論文の頻繁な更新とヒアルロン酸研究の最前線を扱った新たな論文を追加し、このサイトに新しい情報を提供し続けて欲しいという要請があったことを大いに喜んでいます。 先般チャールストンで開催された、Bryan Toole とVincent Hascallがオーガナイザーをつとめた第7回国際ヒアルロン酸会議は、最先端ヒアルロン酸研究の現状を知るまたとない機会となるとともに、“The Science of Hyaluronan Today”の新たな10年の活動をスタートさせる素晴らしい第一歩となったと言えます。読者の皆さまに、更に発展を続けるこのサイトを楽しみ、かつ有益に感じていただくことができれば幸いです。
2003年に開催されたヒアルロン酸に関する国際会議“Hyaluronan 2003”は、興奮を覚える今後の方向性を示唆する会でした。ここでは高等生物そして幾つかの細菌性の侵略者のいろいろな生物現象における、我々が親しんでいるヒアルロン酸という分子のとてつもない重要性が紹介されました。このことから今後も新しい最前線のシリーズがこのヒアルロン酸科学のwebsiteに引き続き掲載されることが確信されます。
このシリーズの掲載は6年前始められましたが、様々な経歴を持つ幅広い研究者がアクセスできるような形で、異なるヒアルロン酸の研究分野の現状を要約して紹介することを目的にしておりました。ほとんどの研究領域では、新規の最前線の研究分野でも、時間と共により新しい未知の領域発展しますが、これは本websiteに既に掲載された幾つかの論文にも当てはまります。 従って我々は最初の掲載から2年経過した著者にUpdateの機会を用意しました。 Updateの目的は最初の総説が書かれた時と現在までの間にどの様な新しい出来事が起きたかを紹介することです。Updateはwebsite上初回の総説のすぐ後に掲載します。
我々はPaul Weigel博士とRobert Stern博士によって書かれた“細菌のヒアルロン酸合成酵素”と”ほ乳類ヒアルロニダーゼ“でこのUpdateのシリーズを始められることを大変嬉しく思います。そして将来もっと多くのUpdateを掲載できるよう期待しております。
生化学工業(株)は1997年に50周年を迎え、この祝賀行事の一環として “Glycoforum”web サイトをオープンしました。Glycoforumは糖質生物学における最新の興味深い研究活動に関して、一般研究者向けに、簡潔な解説文を提供するものです。これらの解説は、研究コミュニテイーをより広げることを目指すもので、特集された個々のテーマにおける専門家だけを対象とするものではありません。
我々は、生化学工業(株)がGlycoforumの最初のシリーズとして、「今日のヒアルロン酸科学」を選び、私たちにその編集を依頼されたことを喜んでおります。このシリーズは、自然界における最も魅力的な高分子であり、現在研究及びビジネス両面から多大な関心が寄せられている物質に焦点を当てます。この文に続く最初の解説文は、ヒアルロン酸を紹介し、その後に続くシリーズの背景を説明します(3ヶ月毎に2テーマづつ2年間継続の予定)。
私たちは、このシリーズが有益で興味深いものとなることを希望しております。このシリーズで感じられた疑問やご意見をどしどしお寄せ下さい。