UDP-グルコース:グルコシルトランスフェラーゼ | |||||||||||||||||
(Update Issue: 2007年 3月 2日) | |||||||||||||||||
セラミドに働きグルコシルセラミド(GlcCer)を作るグルコシルトランスフェラーゼ(GlcT-1)は、400種以上の糖脂質合成の最初の段階を触媒する重要な転移酵素である。 GlcT-1タンパクを精製し、一次構造を決定し、その遺伝子構造を決定することは極めて重要な仕事である。GlcT-1は、今から30年も前にBasuらにより見いだされた(1)。この酵素タンパクはゴルジ体膜結合性で、且つ量的にも少ないため精製は極めて困難であった。 1996年、Paulらは、ラット肝ゴルジ膜より1万倍まで精製することに成功した(2)。精製酵素は、セラミドのエリスロ体に特異的であり、スレオ体には作用しなかった。また、酵素活性の発現には、リン脂質(ジオレオイルフォスファチジルコリン)の存在が必要であり、またヘキソースの供与体としてUDP-グルコースが必須である。GlcT-1の特徴は、その膜トポロジーにある。ゴルジ体のルーメン側にある他の多くの糖転移酵素と異なり、GlcT-1は、ゴルジ膜の外側、細胞質側に存在する。このことは、細胞質側での転移反応で生じたGlcCerは、フリッパーゼと呼ばれる因子によりルーメン側に運ばれることを意味している。 | |||||||||||||||||
GlcT-1 : Glucosylceramide synthase, GalT : Lactosylceramide synthase | |||||||||||||||||
1996年、GlcT-1活性の欠損したメラノーマ細胞GM-95を使い、発現クローニング法によりGlcT-1遺伝子のクローニングに成功した(3)。遺伝子情報から、GlcT-1タンパクは、過去に報告されたことのない新規のタンパクであり、タイプIII型の膜トポロジーを有していることが明らかとなった。このことは、セラミドのグルコース化反応が細胞質側で行われるという予想と一致している。GlcT-1遺伝子のヒト染色体上の位置は、9q31である。 糖脂質はあらゆる組織に存在しているが、GlcT-1mRNAも調べた全ての組織で発現していることがノーザンブロット分析により示されている。また、似たような配列を持った遺伝子が、マウス、ラット、線虫、ハエ、らん藻に至るまで広く分布しており、この遺伝子の生物学的重要性が示唆される(4)。 動物レベルでのGlcT-1の機能を解析するためには、GlcT-1のノックアウトマウスの作成が望まれている。このマウスはガングリオシドを含めたほとんど全ての糖脂質が欠損していると思われ、糖脂質の一般的機能を知る上で極めて貴重なマウスであると期待される。 | |||||||||||||||||
平林 義雄 市川 進一(理化学研究所国際フロンティア・糖細胞情報研究室) | |||||||||||||||||
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1998年 6月 15日 | |||||||||||||||||
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