Glycolipid
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UDP-グルコース:グルコシルトランスフェラーゼ

(First version published: 1998年6月15日) 
  セラミドに働きグルコシルセラミド(GlcCer)を作るグルコシルトランスフェラーゼ(GlcT-1/GCS/UGCG, EC 2.4.1.80)は、400種以上の糖脂質合成の最初の段階を触媒する重要な転移酵素である。GlcT-1タンパクを精製し、一次構造を決定し、その遺伝子構造を決定することは,糖脂質の機能を理解する上で極めて重要である。GlcT-1は、今から30年も前にBasuらにより見いだされた(1)。この酵素タンパクはゴルジ体膜結合性で、且つ量的にも少ないため精製は極めて困難であった。1996年、Paulらは、ラット肝ゴルジ膜より1万倍まで精製することに成功した(2)。精製酵素は、セラミドのエリスロ体に特異的であり、スレオ体には作用しなかった。また、酵素活性の発現には、リン脂質(ジオレオイルフォスファチジルコリン)の存在が必要であり、またヘキソースの供与体としてUDP-グルコースが必須である。GlcT-1の特徴は、その膜トポロジーにある。ゴルジ体のルーメン側にある他の多くの糖転移酵素と異なり、GlcT-1は、ゴルジ膜・小胞体の外側である細胞質側に存在する。このことは、細胞質側での転移反応で生じたGlcCerは、フリッパーゼと呼ばれる因子によりルーメン側に運ばれることを意味している (図1)。


図

GlcT-1 : Glucosylceramide synthase, GalT : Lactosylceramide synthase



 1996年、GlcT-1活性の欠損したメラノーマ細胞GM-95を使い、発現クローニング法によりGlcT-1遺伝子が単離された(3)。遺伝子情報から、GlcT-1タンパクは、タイプIII型の膜トポロジーを有していることが明らかとなった。このことは、セラミドのグルコース化反応が細胞質側で行われるという予想と一致している。GlcT-1遺伝子のヒト染色体上の位置は、9q31である。

 糖脂質はあらゆる組織に存在しているが、GlcT-1mRNAも調べた全ての組織で発現している。また、似たような配列を持った遺伝子が、マウス、ラット、線虫、ハエ、らん藻に至るまで広く分布しており、この遺伝子の生物学的重要性が示唆される(4)。実際、全身ノックアウトマウスは、胎生期7.5日で死ぬ。しかし、個体死の原因は不明である。動物レベルでのGlcT-1の機能を解析するために、GlcT-1の組織特異的なノックアウトマウスの作成が進められている。その結果、皮膚の機能や神経系の発達と維持に糖脂質合成が必須であることが示されている(5)。
平林 義雄  市川 進一(理化学研究所脳科学総合研究センター、新潟薬科大学)
References(1)

Basu S, Kaufman B, Roseman S, J. Biol. Chem. 243, 5802-5807, 1968

(2)Paul P, et al. J. Biol. Chem. 271, 2287-2293, 1996
(3)Ichikawa S, Hirabayashi Y, Trends Cell Biol. 8, 198-202,1998
(4)Kohyama-Koganeya A, et al. J. Biol. Chem. 279, 35995-36002, 2004
(5) Jennemann R., et al., Proc Natl Acad Sci USA, 102, 12459-12464, 2005
2007年 3月 2日

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