Glycomicrobiology Now

Editor: 鈴木 康夫

はじめに

感染症における糖鎖の役割

 21世紀における主要な病気は、生活習慣病、ガンなどに加えて新興・再興感染症が挙げられます。感染症の原因である病原微生物は、表面に糖鎖を持っています。また、エンベロープを持つウイルスの多くや、それを持たないウイルスのいくつかも糖鎖を持っています。そして、彼らの持つ糖鎖は宿主の免疫監視機構から逃れたり、積極的に宿主への感染に役立っています。一方、微生物が宿主側の糖鎖を利用する機構も存在しています。この場合は、微生物が有する糖鎖を認識するレクチン様分子、これらはしばしば、へマグルチニン、アドヘシンあるいは毒素とも呼ばれますが、これらを介して宿主細胞への感染を果たしているのです。

 ウィルスや微生物とそれらの宿主動物の進化には、糖鎖を介した感染という相互認識が深く関わっていることは否定できません。すなわち、感染症の克服には糖鎖微生物学を基盤とした研究は欠かせないと言えると考えます。
 このサイトは、ウイルス、細菌、原虫、カビなどの微生物と糖鎖に関するすべての科学分野を包括する予定です。多くの研究成果のレビュー、オピニオンが寄せられることを期待しております。

Defence against immune system

Infection of microbes to host cell through their lectins or lectin-like molecules


Yasuo Suzuki
Yasuo Suzuki

現代における新興再興感染症

 20世紀中には撲滅されると考えられていたウイルスや細菌による感染症は、20世紀末には、予期に反して新興・再興感染症として姿を現すようになりました。その背景として考えられていることは、20世紀に始まった産業活動の爆発的なひろがりです。特に熱帯地域での大規模森林伐採は、結果としてヒトと病原微生物の接触の機会を著しく増大させました。また、地球温暖化は温帯地域の熱帯化を引き起こし、蚊やハエなど病原微生物の媒介昆虫の増殖を引き起こしました。そして、大量空輸による交通手段の迅速化が、病原体の移動を世界規模で容易にしたことな どが新興・再興感染症の出現の主たる要因としてあげられています。2003年に出現したSARSはその典型例です。

 このような状況のなかで、感染症は正にこれから人類が直面する大きな課題であると考えられています。私たちは、この現代の難問に立ち向かうときに、糖鎖研究の方面から大きな貢献がなされることを願っています。